イベント救護の準備ガイド|救護所・人数・物品・AED・当日の流れ

「会社のイベントの救護担当になった」「お祭りやマラソン大会の救護体制を考えておいて、と言われた」——でも、救護所をいくつ置けばいいのか、だれを何人呼べばいいのか、すぐに答えられる方は多くありません。何から手をつければいいのか分からないまま、このページにたどり着いた方もいると思います。

先に結論をお伝えします。イベント救護の準備は、「救護所と人員」「AEDと物品」「傷病者が出たときの連絡の流れ」「暑さへの備え」「記録」の5つを決めれば、形になります。どれも、東京都や環境省などが公開しているガイドラインに目安があります。

この記事では、その目安を紹介しながら、企業イベントやフォーラムで救護所を運営してきた民間救急リーベルのスタッフが、主催者の方が迷いやすいところを順に整理します。救護マニュアルをつくるときの下敷きとしてお使いください。

最初に決めておく5つのこと

イベントを開くなら、季節や規模にかかわらず、けが人や急病人が出たときの段取りを前もって決め、スタッフや会場の管理者と共有しておくことが大切です(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」)。決めておきたいのは、次の5つです。

  • 救護所の場所と数
  • 救護スタッフの職種と人数
  • AEDと物品の置き場所
  • 傷病者が出たときの連絡の流れ
  • 暑さ・天候への備えと、中止を決める人

規模が大きいイベントでは、決めた内容を地域の消防や警察とも共有し、全員が同じ段取りで動けるようにしておきます。ひとつずつ見ていきましょう。

救護所はいくつ、どこに置く?

東京都のガイドラインは、会場に医療救護所を1か所以上置くこととし、観客およそ1万人(1万席)ごとに1か所を目安にしています(東京都「大規模イベントにおける医療・救護計画策定ガイドライン(第2版)」)。

このガイドラインは、都が関わる大規模なイベントを想定したものです。それでも、規模にかかわらずイベントの計画づくりの基礎資料として使ってほしい、と書かれています。数百人から数千人の催しなら、まずは「救護所を1か所」から考えると分かりやすいでしょう。

置く場所の選び方

  • 入口やゴールの近くなど、人が集まり、具合の悪い人が出やすい場所
  • 救急車が近づける場所。救急車を止める場所と、そこまでの道順も決めておく
  • 横になって休める、日陰や屋内のスペース
  • 案内図や看板で、だれでも場所が分かるようにする
救護所の案内看板と、無線を持って待機するリーベルのスタッフ
看板を立てると、救護所の場所がひと目で分かります(リーベルが運営した企業イベントの救護所)

一度にたくさんの人が具合を悪くしたときに備えて、救護所の近くに「臨時の救護スペース」を決めておくことも、東京都のガイドラインで勧められています。

マラソン大会の場合

マラソンやロードレースでは、コースに沿って救護所を置きます。日本臨床救急医学会雑誌に載った「マラソン・ロードレース救護・医療体制整備指針案」は、次を目安にしています。

  • スタートとゴールには必ず置く
  • フルマラソンは、20km地点までに2か所以上、20km地点からゴールまでに4か所以上
  • フルマラソン以外は、間隔が10kmを超えないように置く

同じ指針案は、心停止がコースの後半(フルマラソンでは約30km以降)やゴール直後に多くみられた、という調査も紹介しています。後半とゴールまわりは、手厚くしておきたい場所です。

救護スタッフは、だれを何人?

東京都のガイドラインでは、救護所ごとに「医師1名・看護師等2名」の医療救護班を1班置くことを原則としています。

マラソン大会については、先ほどの指針案が、ランナー1,000人あたりの目安を示しています。

医師2〜3人
看護師・救急救命士4〜6人
理学療法士・スポーツトレーナー4〜6人
医療職以外(傷病者を運ぶ係、用具係など)〜6人
ランナー1,000人あたりの目安(「マラソン・ロードレース救護・医療体制整備指針案」より)

すべての救護所に医師がいるのが理想ですが、難しいときは看護師か救急救命士を必ず置き、本部にいる医師から指示や助言を受けられるようにする、とされています。

医療スタッフがいると、何が変わる?

環境省のマニュアルに、こんな例が載っています。参加者2万人・観客200万人前後が集まる夏の祭り「にっぽんど真ん中祭り」では、2006年から医療チームが加わったところ、重症の救急搬送が大きく減りました。2005年には30名前後だった救急搬送が、2006〜2016年の平均では3名以下になっています。

会場で手当てをし、病院での治療が要るかどうかを見きわめることで、本当に必要な人だけを救急車で運べるようになる——同じマニュアルは、救護所を置く意味をこう説明しています。

小さな催しなら

何人必要かは、参加人数、会場の広さ、開催時間、催しの内容で変わります。リーベルでは、数千人規模・複数日の企業イベントやフォーラムで、看護師1名と救急救命士1名の2名で救護所を運営してきました。社内行事や地域のお祭りなら、スタッフ1名の配置からご相談いただけます。

AEDは「5分以内」に届くように置く

心臓が止まってしまった人を救えるかどうかは、電気ショックまでの時間で大きく変わります。日本救急医療財団の「AEDの適正配置に関するガイドライン」では、電気ショックが1分遅れると社会復帰率が9%下がる、という調査が紹介されています。

そのためガイドラインは、心停止から5分以内に電気ショックができるよう、現場から片道1分以内で取りに行ける間隔でAEDを置くことを示しています。イベントでは、次の4つを確かめておきましょう。

  • 会場にあるAEDの場所を、スタッフ全員で確かめる
  • 会場図にAEDの場所を書き込み、救護所と各持ち場に配る
  • 片道1分で届かない場所があれば、AEDを追加で用意する
  • 屋外では、暑さ・寒さや雨風を避けられる場所に置く

AEDが足りないときは、自治体や大学がイベント向けに貸し出している場合があります(同じガイドラインでも、こうした貸し出しの仕組みが紹介されています)。

参加者が5,000人を超えるような大規模なマラソン大会では、決まった場所に置くだけでなく、自転車隊や併走車でAEDを運ぶ「モバイルAED」も有用とされています。マラソンの指針案は、心停止から3分以内(遅くとも5分以内)の電気ショックを目標に、おおむね300mごとのAEDが必要と計算しています。

救護所の物品チェックリスト

救護所に置く物品は、具合を見る道具、けがの手当てに使う物、休んでもらうための物が中心です。マラソンの指針案が示す救護スタッフの装備をもとに、イベントで使いやすい形にまとめました。

具合を見る血圧計、体温計、パルスオキシメーター(血液中の酸素を測る機器)、ペンライト、聴診器
命を守るAED、バッグバルブマスク(人工呼吸の道具)、ポケットマスク
けがの手当てガーゼ、三角巾、テープ、ばんそうこう、消毒液、弾性包帯、はさみ
冷やす・温める冷却パック、冷却スプレー、保温シート(アルミ)、タオル、使い捨てカイロ
水分水、経口補水液、紙コップ
休む・運ぶ担架、ベッド、目隠しの仕切り
感染を防ぐ手袋、マスク、ガウン、ゴミ袋、ウエットティッシュ
記録・連絡傷病者の記録用紙、クリップボード、筆記用具、無線や携帯電話と予備のバッテリー、役割が分かるビブス
「マラソン・ロードレース救護・医療体制整備指針案」の装備の表をもとに作成

大規模なイベントについては、東京都のガイドラインが、救護所ごとに傷病者100人分の資器材を目安にしています。担架は、中等症以上になりそうな人の数の半分ほどを用意しておくのが望ましい、とされています。

そろえるのが大変なときは、救護を頼む会社に持ち込んでもらう方法もあります。リーベルは、会場の設備を伺って、足りない物品やAEDを持ち込みます。

傷病者が出たときの流れ(フローチャート)

いざというときに困るのは、「だれが、どこへ連絡するのか」が決まっていないことです。環境省のマニュアルが示す例をもとに、基本の流れをまとめました。

  1. 見つけたら、本部へ見つけたスタッフは、すぐに本部(救護の責任者)へ連絡します。場所は、会場を区切ってつけたエリア名や番号で伝えると、早く正確に伝わります。
  2. 救護スタッフが駆けつける本部の指示で、救護スタッフが現場へ向かいます。
  3. 軽い症状なら、救護所で休む救護所で手当てをし、様子を見ます。
  4. 命に関わるおそれがあれば、迷わず119番だれが119番をかけるかを、前もって決めておきます。
  5. 救急車を迎えに出る決めておいた場所にスタッフが立ち、救急隊を傷病者のところまで案内します。
  6. 引き継いで、記録する救急隊に経過を伝え、記録の写しを渡します。対応した内容は本部に報告します。

大きなイベントでは、連絡の窓口を本部にまとめます。ただし、そのせいで119番が遅れないように気をつけます(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」)。

救急車を呼ぶほどではない人は?

「救急車を呼ぶほどではないけれど、病院で診てもらったほうがいい」という人も出ます。東京都のガイドラインは、こうした軽症の方を救急車以外で運ぶ方法として、民間救急(東京消防庁の認定を受けた患者等搬送事業者)の活用を検討するよう挙げています。会場に民間救急車を待機させておけば、地域の救急車を使わずに病院へお送りできます。

暑い時期は「防ぐ」と「出たあと」の両方を

夏のイベントでいちばん気をつけたいのが熱中症です。環境省のマニュアルは、熱中症への対策には「発生を防ぐ対応」と「発生後の対応」の両方が必要で、どれだけ防いでもゼロにするのはとても難しいため、出たあとに対応できる体制が特に大切だとしています。

2011年8月に横浜で開かれた音楽イベントでは、3,000人を超える参加者のうち36人が熱中症で救急搬送されました。参加者のおよそ1%にあたります(同マニュアル)。

防ぐための工夫

  • 長い待機列をつくらない(整理券を配る、集合時刻を知らせる、指定席にする)
  • 待つ場所は日陰へ(木陰や建物の陰、日よけの下)
  • 入口や退場口を増やし、混雑をやわらげる
  • 給水所や自動販売機、救護所の場所を分かりやすく示す。自動販売機の売り切れにも注意する
  • いつでも休める場所を用意する

出たときの備え

  • 冷たい飲み物をとれる場所と、涼しく休める場所を決めて、案内する
  • イベントを中断・中止する基準と、それを決める人を決めておく
  • 観客だけでなく、スタッフやボランティアにも声をかける

終わったあとは、記録を次に生かす

東京都のガイドラインは、天気、会場の様子、救護の体制と活動、傷病者の情報などを記録して整理し、次の計画に役立てることを、主催者の大切な取り組みとしています。毎年開くイベントなら、「いつ、どこで、どんな人が具合を悪くしたか」が分かるだけで、救護所の場所や人数を見直せます。環境省のマニュアルも、記録をもとに改善を繰り返すことを勧めています。

記録には、名前や連絡先などの個人情報が入ります。だれが保管し、どこまで共有するかも、あわせて決めておきましょう。

準備から報告まで、救護をまとめて任せる

ここまで読んで、「全部を自分たちで用意するのは大変そう」と感じた方もいるかもしれません。救護は、準備から当日、終了後の報告まで、まとめて任せることもできます。

民間救急リーベルは、イベント救護を次の流れでお引き受けしています。

  1. 救護計画をつくります参加人数・会場・開催時間をもとに、スタッフの人数と配置、救護所の場所、119番通報と救急隊への引き継ぎの方法をまとめます。
  2. 物品とAEDを持ち込みます会場の設備を伺い、足りない分を当社で用意します。
  3. 当日の救護を担当します看護師・救急救命士が救護所に入ります。民間救急車(乗務員2名)の待機もご依頼いただけます。
  4. 終了後に報告書をお渡しします対応した件数と内容をまとめて、主催者の方へご報告します。

イベント救護に使える賠償責任保険にも加入しています。

料金の目安

体制の例料金の目安(税込)
看護師または救急救命士 1名・8時間約3.5〜4.6万円
救護所の運営(看護師1名+救急救命士1名)・8時間約7.0〜9.2万円
民間救急車の待機(乗務員2名)・8時間約6.2〜8.1万円

※金額は、表の条件で考えた目安です。物品・AEDの持ち込み、救護計画・報告書、交通費・宿泊、早朝・深夜の対応、時間の延長などによって変わり、目安より高くなることもあります。正式な金額は、開催概要を伺ってお見積りでお伝えします。

人数が決まっていない段階でも、ご相談ください

  • 東京消防庁 患者等搬送事業者認定
  • 看護師・救急救命士が対応
  • 救護計画から報告書まで

日程と会場、参加人数が分かれば、
必要な人数と配置、お見積りをご案内します。
まだ決まっていないことが多い段階でも構いません。

会場の資料は、メール(ambulance@b2h.tokyo)でもお送りいただけます。
撮影・ロケの救護は、撮影・ロケ救護のページをご覧ください。

まとめ

  • 準備することは「救護所と人員」「AEDと物品」「連絡の流れ」「暑さへの備え」「記録」の5つ
  • 救護所は1か所以上。大規模なら観客およそ1万人ごとに1か所が目安(東京都)
  • AEDは、心停止から5分以内に電気ショックができるよう、現場から片道1分以内の間隔で(日本救急医療財団)
  • 傷病者を見つけたら本部へ。119番をだれがかけるか、救急車をどこで迎えるかを決めておく
  • 夏は「防ぐ」と「出たあと」の両方を。中止の基準と、それを決める人も
  • 記録を残して、次の計画に生かす

参考資料

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